秋風が吹き渡り枯れ葦が目に付く頃の遊水地風景は、なぜか魅力的で私の心を引きつけ、かつてはたびたびスケッチに行きました。360度パノラマ風景の壮大さと葦原のみの寂寥感が心を無に戻してくれるようで、一人たたずむと迷いも風に吹き飛んでいき、どこからともなく力がわいてくるような気がしました。何もない遊水地にむしろほっとして帰ってくるのでした。
また、江戸時代のころの情景として「一疋の 飛ね馬もなし 河千鳥」という俳句が残っています。これは、当時の遊水地辺りを野木神社の方が見下ろして作句したとされているものです。放牧の馬が跳ねることもない静まりかえった寂寞たる野原の様子が彷彿としてきます。この句の石碑が野木神社にあり、そこには「芭蕉墳」とも記されています。
また鎌倉幕府樹立を確実なものとした「野木宮合戦」の古戦場跡も、今の水辺の楽校周辺で、ここの戦に頼朝側が勝利したことは野木町にとっても大変意味あることだと思います。谷を挟んでの戦いは、焼野の煙と春一番の強風が源頼朝側である小山朝政の方に味方し、勝利をもたらした珍しい戦いだったと伝えられています。(1183年春)。
こんなことが野木の遊水地周辺でかつてあったことを思いながら散策するのも、秋にはふさわしいのではないでしょうか?そういえば、野木城跡も水辺の楽校に接する高台です。歴史ロマンに気がそそられてしまいます。
2011年広報のぎ10月号掲載