私たちの町は関東平野の北部に位置し、360度、見渡す限りの平地です。少し高いマンションが一棟あるだけで、あとはあまり突出して高い建物もありません。また山もありませんし高い塔もありません。そのようななかで、ひときわ高くそびえる公民館の望楼の展望台は、野木町を高いところから一望できる貴重な存在でした。少し頭でっかちの感がするその塔の形は、野木町役場の顔のようでもあって、なにかユーモラスでもありました。
しかし残念ながら耐震診断の結果、望楼部分は、震度6強~7の地震に耐えることが原則の公共施設としては相応しくないとされ、望楼突出部分の撤去が必然となりました。約40年前に建築された公民館ですから、すっかり町民の皆様にはお馴染みの見慣れた風景であったと思いますが、安全のためのやむなき撤去工事ですのでご理解下さるようにお願いいたします。
さる10月14日には望楼とお別れするために、最後の公開イベントが行われました。この時には多くの皆様が申し込みをして下さり、展望台からの見晴らしを楽しんでいただきました。そして「町を見守ってきてくれてありがとう!」等というような感謝の言葉が望楼の壁のあちこちに書かれていました。皆様の温かい思いに見送られ、皆様の思い出の中で生き続けていくと信じています。
今から40年前には、町に消防施設もなく、当時火事が起きると職員はすぐに望楼の階段を駆け上がり、展望台から火災発災場所を確認したそうです。今では消防分署もあり、望楼は、ひとつの役目を果たし終えた、といえるでしょう。心から「ありがとう望楼」と言いたいと思います。
その代わりといっては何ですが、現在わが町には「のぎのん」のバルーンがあります。そして世界的バルーニスト藤田雄大さんもおります。今度は野木町をバルーンに乗って、上から眺めることといたしましょう。
それにしても雨の日も風の日も野木町を静かに見守ってきてくれた「望楼」に感謝の気持ちが沸くのはなぜでしょう。公民館にあの望楼があったのは、私にとっても心に残る不思議な風景でしたし、不思議な魅力もありました。展望台からの眺望も忘れられません。でも、「安全」が何よりも一番大切なことは申すまでもありません。
さようなら「望楼」。
2017年広報のぎ11月号掲載